毎年2月にスペイン・バルセロナで開催される通信業界最大のイベントとなるMobile World Congress。今年はSonyとSamsungが新フラッグシップモデルを相次いで発表した。中でもSamsungのGALAXY S5には2014年のスマートフォンの新しいトレンドを随所に見ることができる。
ハードウェアは正当な進化
GALAXY S5のハードウェアスペックを見ると、CPUは2.5GHzクアッドコア、ディスプレイは5.1インチ有機EL、解像度1920×1080ピクセル、16メガピクセルのメインカメラに2メガピクセルのフロントカメラを備えている。メモリ容量はRAMが2GB、ROMが16または32GBでマイクロSDカードによる拡張も可能だ。これら各スペックは前機種であるGALAXY S4から順当に強化されており、SonyのXperia Z2とほぼ同等のものになっている。
SamsungはGALAXY S5の背面カバーを多数の穴の開いたデザインにするなど、外観上でもこれまでのスマートフォンとの差別化を図ろうとしているが、CPUの強化やカメラ画素数の向上は妥当なものだけに、スマートフォンの進化としてはあまり目立ったものはないように感じられるところもある。カメラについてはオートフォーカス時間0.3秒と世界最速、ボケのある写真を撮影できる「Selective Focus」を搭載するなど着々と機能は強化されている。
基本スペックの向上は正当な進化といえるGALAXY S5
思い切ったデザインの変更が行われた背面カバー
通信速度の高速化も重要な要素に
一方、地味なようで大きく強化されたのは通信機能だ。LTEへの対応は当然の進化だが、FDD-LTEに加えTD-LTEモデルも提供される予定で、国によっては両方式を同時にサポートする。8つのLTE周波数にも対応するとのこと。またカテゴリ4に対応することで最大の通信速度は下り150Mbpsをサポートする。ストリーミングで動画サービスを利用する際などはカテゴリ3/75Mpbs対応のスマートフォンよりも快適な視聴が可能となる。
またWi-Fiは802.11acにも対応。LTEとWi-Fiを併用して大容量ファイルの高速なダウンロードが可能になる「Download Booster」も搭載している。動画などエンターテイメント用途だけではなく、プレゼンのPDFファイルのダウンロードなどオフィス用途にも有用だろう。スマートフォンのスペックアップは本体そのものの機能向上に注目しがちだが、LTE時代を迎えたことで高速通信への対応もこれからは重要になってくる。GALAXY S5はその高速通信への対応をしっかりと行っているのだ。
LTEも対応周波数や高速化への対応が重要に
センサーの搭載がこれから進む
またGALAXY S5にはスマートフォンとして初の心拍センサーが搭載された。カメラのフラッシュの横に配置されており、心拍数を計測する際も指先を無理なくセンサーへかざすことができる。心拍センサーについては最近流行りのリストバンド型のウェアラブルデバイスへの搭載が相次いでいるが、スマートフォン単体でもいつでも心拍数を計測できるということは健康管理を気にする消費者にとって気になる機能になるだろう。健康データをスマートフォンで管理する動きがGALAXY S5ユーザの間で加速化するかもしれない。
そしてホームボタンには指紋センサーも搭載されている。指紋認証は本体のロック解除や写真など個人データのプライバシー保護に利用できるだけではなく、オンラインペイメント時の認証にも利用可能となる。現時点ではPayPalのみの対応だが、今後様々なサービスへの認証への対応も期待されている。スマートフォンへの各種センサーの搭載はGALAXY S5を皮切りに今後他社へも広がっていくかもしれない。
スマートフォン世界初という心拍センサーを搭載
指紋センサーでオンライン支払にも対応
日本の技術がようやく海外にも
この他に大きな機能としては、IP67相当の防塵防水への対応が挙げられる。発表会でも多くの海外メディアが本機能への対応には賞賛の声を上げていた。但しこれは入浴中にスマートフォンを使うという日本ならではの用途というよりも、スマートフォンを使う場所がオフィスや家庭だけではなくスポーツジムなどフィットネスの場にも広がったからだろう。GALAXY S5そのものにも歩数計などが内蔵されているし、同時に発表されたウェアラブルデバイスのGearシリーズにもフィットネス関連の機能が搭載されている。スマートフォンを裸で持ちながら運動することがこれからは一般的になっていきそうだ。
他の特徴ではバッテリーが2600mAhとGALAXY S4から200mAhだけしか容量アップしていないものの、新しい省電力機能の搭載で動作時間を大幅に伸ばしている。その中でもは「Ultra Power Saving Mode」は日本で発売されたGALAXY J(SC-01F)に搭載されていた機能であり、バッテリー残量が10%以下でも24時間の駆動が可能となる。防水や省電力といった、これまでは日本の消費者が独自に求めていたと考えられた機能もこれからはグローバル向け製品への搭載が広がっていくだろう。
フラッグシップモデルもついに防塵防水対応に
日本の製品向け技術がグローバルモデルにも搭載
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