最近日本でも話題となっている中国のスマートフォンメーカー、小米(Xiaomi、シャオミ)。中国大人気の同社のスマートフォンの動向は、中国市場のトレンドを牽引している。
中国スマートフォン市場のトレンドリーダー
小米は低価格・高性能なスマートフォン「小米」シリーズで中国でも一躍人気のメーカーに上り詰めている。新製品の発売スケジュールは半年から1年、少数精鋭の製品展開はAppleにも通じるところがあるが、小米の製品は「高性能なのに価格が他社品より安い」という、Appleとは全く異なる戦略で販売数を伸ばしている。
例えば現行のフラッグシップモデル「小米3」はクアッドコア2.3GHz CPU、5インチフルHDディスプレイ、W-CDMA対応、1300万画素カメラを搭載しながらも中国での販売価格は1999元(約3万3000円)。この価格は他社の同等性能品よりも3割程度安く、SamsungやHTCなど大手メーカーの上位モデルに匹敵する内容だ。単純な性能ではAppleのiPhone 5cをも上回っている。

この小米3の1999元という価格も実は絶妙だ。中国では1000元台のスマートフォンを総称して「1000元スマートフォン」と呼んでいる。この1000元スマートフォンは通信事業者と毎月1000円程度の基本料金のプリペイド契約を結ぶと無料で購入できるものが多い。小米3はその1000元スマートフォンの価格レンジながら、本体性能は各社のフラッグシップ相当というコストパフォーマンスに優れた製品でもあるのだ。
低価格品ブームの波にも乗る
その小米は2013年の夏に新しく低価格スマートフォンも発表している。「紅米」という低価格端末は本体価格がわずかに799元(約1万3200円)。この価格ながらも1.5GHzクアッドコアCPU、4.7インチHDディスプレイ、800万画素カメラ搭載と普段使いには必要十分な性能を搭載している。小米は2011年に販売を開始した初代モデル「小米1」から一貫して低価格・高性能な製品をリリースしてきたが、この紅米はその戦略を大きく変えた低価格帯の普及モデルなのだ。

実は中国では前述したように1000元スマートフォンが人気となっているが、今では1000元を切る低価格の製品もフィーチャーフォンからの乗り換えユーザーを中心に人気となっている。中国の調査会社iiMedia Researchによれば、2013年第2四半期の中国国内のスマートフォン販売数を価格別にみてみると、最も売れているのが1000元以下の製品で全体の4割をも占めている。そしてその次が1000元から2000元の「1000元スマートフォン」でこちらが約3割となった。小米の製品は価格やスペックが常に話題になるが、その価格戦略の裏には中国スマートフォン市場のトレンドをしっかりと先取りしているのである。
世界の販売シェアに2機種がランクイン
小米のスマートフォンの中国での人気は高く、同社のオンライン販売ショップは毎回提供される限定数の製品数万台が秒単位の時間で常に完売になるほどだ。中国国内での販売シェアも10位以内に入っており、老舗の国内メーカーや海外の大手メーカーと互角に戦い合っている。
香港の調査会社Counterpointによると、2014年2月単月の世界のスマートフォン販売台数の10位以内に小米3(英語名:Xiaomi Mi3)と紅米(英語名:Hongmi / Redrice)の2機種がランクインした。この2モデルはほぼ中国国内のみで販売されており、中国市場だけでの販売台数で世界ランキングに2台も入っているのである。ちなみに小米以外の顔ぶれはAppleのiPhoneが3機種、残りはすべてSamsungのGALAXYシリーズのみである。

5.5インチの低価格ファブレットで海外進出を本格化
小米の新製品の投入サイクルはほぼ半年おきで、毎年秋と春に大々的な発表会を行っている。2014年春には新たな戦略モデルを発表した。それが「紅米Note」である。Noteの名前はSamsungの大画面モデル「GALAXY Note」シリーズに追従した大画面モデル、いわゆる「ファブレット」だ。そして紅米の名前を冠していることからわかるように低価格レンジを狙った製品なのである。紅米Noteのスペックは1.4GHz オクタコアCPU、5.5インチHDディスプレイ、1300万画素カメラなど。このスペックで価格は799元と驚異的な低価格で登場している。なおCPUを1.7GHzに高速化した上位モデルも999元で用意されている。
この紅米Noteも中国国内の大画面需要に乗った製品だ。5.5引致を超える大画面ファブレットは各メーカーから製品が発売になるほど中国ではメジャーな分野の製品になっており、小米もそのトレンドをいち早く取り入れている。しかもファブレット需要はアジア全体にも広がっており、紅米Noteがまだ販売されていない東南アジアでも大きな話題になっているほどだ。ちなみに小米のスマートフォン販売台数は2013年に1870万台を記録している。2014年は倍増となる4000万台以上を目指しており、そのためには海外への本格的な進出は必須だろう。

小米はこれまで中国での販売に特化しており、2013年後半になってからようやく香港と台湾に進出した。2014年に入ってからはシンガポールでも製品の販売を開始するなど着々と海外への販路を広げている。高スペックでコストパフォーマンスの高い小米3、低価格な紅米、そして大画面の紅米Noteと3つの異なる製品が揃ったことにより、小米の製品は今後アジアを中心に販売数を伸ばしていくだろう。
山根先生が書いたおすすめ記事
■東京オリンピック時の参考にしたい、シンガポールの無料WiFiサービス
■GALAXY S5に見る2014年スマホの新トレンド
■これからのスマホカメラのトレンドは「自分撮り」
■無料通信分を他人に販売できる香港のサービス
■スマートフォンと連携できる腕時計は流行になるか?
その他の山根先生の記事一覧:山根康宏のワールドモバイルレポート
モバイル研究家の記事一覧 :モバイル研究家コラム